悩み多き歯科医師さん

自分の天職か

張り切って歯医者さんになってもそれがよかったのか不安に。

子供の頃から将来の夢アンケートでは「歯医者さん」と答えていたような根っからの 筋金入りの歯科医師志望者でも、それが現実になった時上手にやっていけるか、 念願が叶ってそのまま夢のような時間がいつまでもどこまでも線路のように続くのか といえばそれほど甘くはないようで、昔から頭の中で思い描いていた理想像に少しでも 近づけるように毎日の仕事をしながらもこの仕事を選んだことが正しかったのかと、 深夜ベッドの中で丸くなりながら考えてしまう人もいます。 まあ歯科医師に限ったことでもないでしょうが、本当にこの仕事に向いているのか 悩むことは誰しも常々感じる疑問であり、それが煮詰まってくると大きな悩みとなり 業務に差し支えたり普段の生活にも悪い影響を与えるようになります。 幼児の頃から将来なりたい職業が歯医者さんが第一志望だったような人でも迷い無く 歯科医師の使命を果たすために入れ歯を制作して虫歯の治療を続けることに不安で、 「本当は歯科医師よりもウッドベース奏者になってジャズバンドを組んで全国を 回ったほうが自分には合っていたのかもしれない」「もしかして今の自分はこの仕事に 満足していないのではないか、やっぱりドラフトで一位指名を貰ったときに素直に プロ野球選手になればよかったかも」「同じ医者でも歯科ではなく産婦人科にすれば よかったような気が」「しまった、自分は虫歯が多いしこのままでは患者さんに対して 偉そうに歯磨き講習できる立場じゃ無いよ、参ったな」と歯医者であり続けることを 不安がるくらいですから、なんとなく歯医者になってしまった人はなおさらです。 適当に決めた進学先で適当にやっていたら歯科医師になっていた、という人や親の 勧めで歯科医師になった人なんかは確たる信念も持たずに歯を削ったり歯を磨いたり しているわけですから、特にやりがいを感じることもなく仕事を続けるだけです。 研修で院長先生のアシスタントを務めてもやる気がないように見られてしまいますし、 それを指摘されると「たしかにあなたの言う通りかもしれない」「もっともだ」 「やる気の出る薬はこの医院で処方してもらえませんか」と思ってしまいます。 こんな考えや覚悟のままで立派な先生になれるのかと朝から布団の中で悩むのですが、 それでもすんなりとたやすく開業して自分の病院を経営する人もいますが、院長の 椅子に座ったところで長年の悩みが完璧に解消するわけでもなく、投げ出すわけには いかない状況になったけれどこれでいいのかと自問自答する日々はそれからもまだまだ もうしばらくの間は続くかもしれないのです。 これを解決するのはなんといっても患者さんの喜ぶ姿をみること、泣きながら感謝 されることで「私の治療のおかげで救われる人がいるんだ」と自覚することを繰り返す うちにやりがいを感じられるようになり、また励みにもなります。 そこまで到達しないうちは自分はこのままでいいのか、歯科医師の肩書きのままで やっていけるのかと独りで苦悩する先生も多く、鬱病になってしまったり軽い自殺願望 を持つ場合もあるようです。 ドクターには変わり者が多いと昔から言われている通りちょっと極端な思考回路を 持っている人も少なくはなく、我々一般人の患者からしたら理解しがたい発想で 行動するケースもありますので、歯科医師の悩みを全て受け止めてあげることは なかなか出来ることではありませんが、それでも常に立派な立ち振る舞いをしている 先生でも私達と同じ人間ですので悩んだり困ったり重圧に押しつぶされそうになって いるのかもしれないということを理解し、天下の歯科医師様だからと常に完璧を 求めたり聖人のような姿を要求するのは行きすぎです。 普通のサラリーマンや私鉄の駅員さんやカラオケボックスの店長と同じように感情 をもっており、休日にはダラダラと過ごしたりケーキバイキングに出掛けたりする 普通の人間ということを忘れてはいけません。