悩み多き歯科医師さん

歯科医院の経営

歯医者さんは病院を経営するのにも大変苦労なさっているのです。

歯科医師の先生方は毎日患者さんの虫歯を治療するだけではなく病院を維持するため にお金の事も海よりも深く考えているのですが、もちろん患者さんにそのことを 悟られるような真似はしません。 医師であると同時に経営者でもあるので金銭的なことを考えるのも当たり前の話 なのですが、患者の健康を第一に優先させるべき医師がお金の心配をする姿を見せる ことはあまり好ましいことではありませんし、経営が苦しそうな様子が患者さんの 間で噂になってしまうと医療レベルも低下してるんじゃないかと思われてしまいます。 お金がなければサービスの質も下がってしまうと不安がらせてしまうのです。 これは病院だけの話ではなく、いつ行ってもお客さんが少ないお蕎麦屋さんや店内の 設備や看板が古くてボロボロのラーメン屋、お客さんが誰も来ない受付でただひたすら ボーッと時が流れるのに身を任せて店員が立っている卓球場は、いつ頃潰れるの だろうと町中で噂になっているものです。 もちろん奥さん達の井戸端会議にも取り上げられる話題なので拡散速度はすさまじく、 早朝に奥さんの耳に入ったら夜には町の住民みんなの耳に入るほどでしょう。 近所で一度そんな噂が流れたらもうそのお店が閉店するまではその噂が付きまとう ことになるので、経営者はお金に余裕が無いとは思われないように振る舞って設備も それなりに定期的に購入してお客さん・患者さんを安心させるのがセオリーです。 たとえ本当に経営が傾いてきたとしてもそれを上手に隠さなければならないのです。 外の看板が割れていたり電球が所々切れていたり植木の観葉植物が枯れていたり、 白衣が黄ばんでいたりトイレの紙がなくなっていたり窓ガラスにヒビが入っており ガムテープで補強してあったり、大きなゴキブリが元気に床を走り回っていたり床に 穴が開いていたり天井に穴が開いていたり、先生がしょっちゅうため息をついていたり 無精ひげをはやしてしまったり虫歯になっているような歯科医院では患者さんが 不安に思い客足も遠ざかってしまいます。 そんな気持ちにさせないためにも建物を清潔に清掃して正装である白衣も綺麗に クリーニングしビシッと着こなして患者さんを迎え入れるのが、正しい経営者としての 歯科医師の姿であるのです。 一般人の感覚ですと歯医者さんは儲かるものだという思い込みがありますので、 それくらいは出来て当然の当たり前の低いハードルだと見られてしまいますが、 歯科医院を開業すればもう後は安泰だという時代はとっくの昔に終了しているのは 当事者である歯医者さんなら思い知っていることです。 歯科医師だからこの先安定して何十年も患者さんがやってきて病院の経営も左団扇 だという神話はとっくに崩壊済みなのです。 歯科医院の数は日本中で約7万ともいわれるほどで、その全てに患者さんが連日 押しかけるほどわが国の虫歯人口や入れ歯人口は多くありません。 今の時代では歯科医院の増加に伴って悪条件の立地にある歯科医院や評判のよろしく ない先生がいる歯科医院は市場原理に従って淘汰されていく運命です。 何も考えずに患者の治療に全力を注ぎたいでしょうが経営者であるからには病院 を守るという使命も背負っているので、そのことで悩む日もあるのです。 このふたつを両立させることが出来ればよいのですがなかなかうまくはいかず、 いつまでも永遠に患者の喜ぶ笑顔を見るために町の歯医者さんで居続けたいと願っても 経営難になったら病院は立ち行かなくなってしまいます。 軌道に乗ってクチコミで新規の患者さんが訪れてくれるようになればいいのですが、 いまやコンビニよりも多いといわれる歯科医院の乱立により生き残りの競争は激しさを 増すばかりで、なかなか自分の思い描くどおりに事は運びません。 この悩みも歯医者さんが抱える大きな問題として、これからも新人歯科医師の前に 立ちふさがり続けるでしょう。